Aug. 2000
毎年、クリスマスの頃、集会が行われる時その会場では、自由な質疑が壇上の村長(島内においては王に等しい)に向けて次々と発せられ、村長はそれに対して、居あわせた住民が満足する見事な応答を素早く演じて見せなければならない。若者連のリーダー格が壇上に飛び上がり、大げさな身振りをもって、島民たちの面前で村長を告発し、彼の行政を非難し、彼を品性下劣にして自己保身にのみ専心する臆病者であると罵り、すみやかな弁明を強要し、村長が弁明するや直ちにこれを論破し、彼の体面をなからしめ、得意げに彼を脅迫し、軽蔑のジェスチュアで演説を終えるのを、私は、見た。また、このような状況において村長の親衛隊と島民とが、あわやつかみあいの喧嘩に発展しそうな形勢になるのを見た。もはや村長の言葉に耳を傾ける者は誰ひとりとして無く、この状況を利用して王座を簒奪しようとするならば、いとも容易く可能であると思われる状況をも目撃した。
 だが、そんなことよりもいっそう驚くべきことは、このような裁きの庭の行事が終わるや、人々はただちに平静を取り戻し、元の秩序にすみやかに帰っていったという事実である。
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